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おしえてロコモティブシンドローム

1.ロコモとは?

ロコモとは?

ロコモとは

「ロコモ」は、ロコモティブシンドロームの略称で、骨、関節、軟骨、椎間板といった運動器のいずれか、あるいは複数に障害が起こり、「立つ」「歩く」といった機能が低下している状態を意味します。進行すると介護が必要になるリスクが高まります。

ロコモティブシンドローム
運動器ってなに?

「運動器」は、骨、筋肉、関節などから構成される器官(きかん)です。
自動車に例えると、運動器はボディ[車体]やタイヤのようなものです。骨、筋肉、関節などの各パーツが連携して働くことで、人間は自分の身体を自由に動かすことができます。
そのため、運動器の各パーツのどれが壊れても、身体をスムーズに動かすことができなくなり、日常生活に支障をきたす可能性があります。
したがって、運動器を健康に維持することがとても重要です。

「運動器」とは、自動車に例えるとボディ(車体)やタイヤのようなもの。「運動器」の各パーツ:脳、脊髄、椎間板、末梢神経、筋肉、関節、軟骨、骨など。出典:日本整形外科学会「ロコモパンフレット2020年度版」より
加齢により骨や筋肉の量は変化します

骨や筋肉の量は20歳代~30歳代でピークに達し、その後は加齢にともなって減少していきます。骨や筋肉の量が減少すると、40歳代、50歳代で身体の衰えを感じやすくなり、60歳代以降になると思うように動けない身体になってしまう可能性があります。

骨量の年齢変化の推移

筋肉量の減少は特に下肢(かし)[太ももの付け根から足のつま先まで]の筋肉で大きく現れます。

年齢にともなう下肢筋肉量の変化
運動器機能の低下が
ロコモを進行させます

運動器には大きく分けて、「体を支える」、「滑らかな動作をサポートするように動く」、「体を動かす」の3つの働きがあり、骨、関節軟骨・椎間板、神経・筋肉がそれぞれの働きを担っています。

ところが、加齢、遺伝、他の病気や、運動習慣の減少など様々な要因によってこれらの運動器の機能が低下することにより、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、変形性関節症、変形性脊椎症、サルコペニア[筋肉減少症]、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)などの病気が引き起こされ、運動器の働きは低下してしまいます。
[ロコモの原因となる疾患については次ページを参照してください]

そして、これらの疾患や運動器機能の低下が互いに関連し合いながら進行することで、筋力やバランス能力の低下、痛み、関節可動域の制限といった更なる運動機能の低下を引き起こし、ロコモと呼ばれる歩行障害や、支援や介護が必要な状態になってしまいます。

ロコモティブシンドロームの進行
介護が必要になる原因のトップは「運動器疾患」

平成28年の国民生活基礎調査によると、支援や介護が必要になった原因の第1位は、転倒・骨折、関節疾患、脊髄損傷(せきずいそんしょう)などの「運動器疾患」であり、全体の24.6%を占めていました。運動器疾患に続いて多かった原因は認知症[18.0%]および脳血管疾患[16.6%]でした。

今後さらに高齢化が進むことを考えると、生活習慣を改善したり運動を習慣化するなど、運動器疾患の予防に積極的に取り組んでいくことが必要となってきます。

要支援・要介護になった原因の第1位である運動器疾患のうち、転倒・骨折の占める割合は12.1%、関節疾患が10.2%、脊髄損傷が2.3%でした。第2位 認知症18.0% 第3位 脳血管疾患(脳卒中など)16.6% 他、衰弱13.3% その他27.6% 厚生労働省,平成28年国民生活基礎調査より

生活機能障害を招き要介護状態に至る危険因子として、近年ロコモのほか、フレイルやサルコペニアへの関心が高まっています。これらはいったいどのような状態を表すものなのでしょうか。今回はフレイル、サルコペニア、そしてロコモとの関係についてご紹介します。

フレイルとは

フレイルは「加齢に伴う予備能力低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態」を指し1)、要介護状態に至る前段階として位置づけられています。予備能力とは負荷に対する抵抗力[ある機能についての最大能力と日常活動に必要な能力の差]のことで、予備能力が低下すると無理や頑張りがきかなくなり、例えば通常の歩行では支障がないのに走ったり坂道を登るなどすると動悸や息切れやのため立ち止まってしまうことなどにもつながります。この状態が続くと、徐々に体が弱ってきたり、精神的にも鬱々としてきたり、外出が少なくなるなど社会的な意味でも弱ってきます。その結果、要支援、要介護状態につながる訳です。

1) 荒井秀典ら 編. 『フレイル診療ガイド2018年版』. 一般社団法人日本老年医学会、国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 2018.

フレイルとは フレイルとは

葛谷雅文. 日本老年医学会雑誌, 2009; 46(4): 279-285. より改変

サルコペニアとは

サルコペニアは高齢期にみられる骨格筋量の低下と筋力もしくは身体機能[歩行速度など]の低下を指します2)。原因はさまざまで、加齢に伴って生じる一次性[原発性]サルコペニアと、活動量の低下、栄養不足、疾患に伴って生じる二次性サルコペニアに分類されます。
一般的に加齢に伴い筋肉量が低下すると脂肪量、特に内臓脂肪が増加する傾向にあります。そうすると、サルコペニアと肥満もしくは体脂肪の増加を併せ持つ状態[サルコペニア肥満]に陥りやすくなり、生活習慣病に発展する危険性が高まります。また、見た目は太っていなくても、実は筋肉が減って脂肪が増えているサルコペニア肥満に陥っているようなケースもありますので注意が必要です。

2) サルコペニア診療ガイドライン作成委員会 編. 『サルコペニア診療ガイドライン2017年版』. 一般社団法人日本サルコペニア・フレイル学会、国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 2017.

サルコペニアとは サルコペニアとは
ロコモとの関係性は?

ロコモ、フレイル、サルコペニアは互いに悪影響を及ぼし合う関係にあります。なかでもロコモは最も広く運動器の脆弱化に関係しており、重症化するとフレイル、サルコペニアを来すと考えられます。将来の寝たきりを防ぐためには、ロコモを早い時期に察知し、早めに対策を講じることが重要です。そうすることで、フレイル、サルコペニア、そして要支援・要介護状態を予防することができるのです。

ロコモとの関係性は? ロコモとの関係性は?
寝たきりにならないために

ロコモの予防に取り組むことは、ロコモ、フレイル、サルコペニアの発症や悪化を防ぎ、寝たきり予防のための重要な対策となります。例えば、習慣的な運動やバランスのとれた食習慣、そして活動的な生活を送ることは、ロコモの予防に重要です。こうした生活は、骨粗鬆症や変形性膝関節症、そして高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病、認知症の予防にも繋がります。世界有数の長寿国である日本で生活する私たちの長い長い人生を元気に生き切るために、ロコモ予防を常に念頭に置きましょう。

寝たきりにならないために 寝たきりにならないために

監修:医療法人社団愛友会 伊奈病院 整形外科部長 石橋 英明先生

2020年12月作成