TOP > おしえて変形性膝関節症:2.変形性膝関節症の検査と治療:手術による治療

おしえて変形性膝関節症

2.変形性膝関節症の検査と治療

手術による治療

変形性膝関節症で行われる主な手術には、「関節鏡視下手術」、すねの骨に対する「高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)」、「人工関節置換術」があります。

関節鏡視下手術

関節鏡視下手術は、膝の関節内に小さなカメラ[内視鏡]を入れて行う手術です。画面を見ながら、関節表面からはがれた軟骨片を取り除くなどの処置をします。
1cmほどの小さな傷で手術が可能なため手術時間が短く回復も早い一方で、効果の持続性は比較的短かったり、症状が再発する場合があります。

膝の中にカメラ(内視鏡)を入れて行う手術です

手術時のからだへの負担が少なく回復も早いのですが、効果の持続性が比較的短い場合もあります。

高位脛骨骨切り術

高位脛骨骨切り術は、すねの骨を膝に近い位置で骨切りして形を変えることで、O脚を矯正する手術です。O脚を矯正すると、それまで膝の内側に集中していた体重の負担が膝の外側に移動するため、膝の内側の痛みが軽減します。

高位脛骨骨切り術の手術後は、骨切り部分がくっつくまでに通常3~4ヵ月ほどかかります。その間は安静にする必要がありますが、治った後はこれまで通りの日常生活動作や運動が可能になります。

脛骨[すねの骨]のかたちを変えて、O脚を矯正し、膝の内側にかかる負担を軽減します

骨がつくまでの期間、安静が必要ですが、治ったあとは、仕事やスポーツを含めた活動が可能になります。

人工関節置換術

人工関節置換術は、軟骨がすり減って変形した関節の表面を取り除いて、金属[チタンやセラッミックなど]や人工の部品[高分子のポリエチレンなど]に置き換える手術です。
変形性膝関節症が進行し、膝関節全体に大きな変形がみられるような場合に膝の人工関節置換術が行われます。膝関節の変形の程度によって、部分的に置き換える「片側(単顆)置換術」、もしくは膝関節全体を置き換える「全置換術」が行われます。

膝の人工関節置換術の手術後は、数日のうちに歩行が可能となります。膝の痛みは軽減し、日常生活への支障も減ります。ただし、関節に大きな負担がかかるような動作や運動はひかえる必要があります。

変形した関節の表面を金属などでできた人工の部品で置き換える手術です
手術にかかる費用は?

手術が予定された場合、通常は入院前にさまざまな検査があります。また、手術後には早期から膝の曲げ伸ばしや歩行練習などのリハビリが開始され、2~3週間程度の入院で退院になります。
入院や手術にかかる費用は保険の有無、種類、症状、入院期間等によって個人差はありますが、通常は3割負担の場合が60万円程(保険を使わない場合で200万円程)で、これに差額ベッド代や食事代など保険が適用されない費用を加えた総額が自己負担額となります。ただし、保険診療では人工膝関節置換術は高額療養費制度の対象になりますので、実際の負担額は1ヶ月あたりの自己負担限度額までで済みます。(差額ベッド代や食事代などは別途負担となります。)

* 手術料、インプラント(挿入する人工関節の機器)代、輸血料、検査料、入院料、リハビリ料などが含まれます。

高額医療費制度のイメージ図 高額医療費制度のイメージ図

高額療養費制度における1ヶ月あたりの自己負担限度額は年齢や収入の額によって異なります。例えば、70歳以上で年収156万円~約370万円の方が入院を伴う治療を受ける場合、高額療養費制度を利用すると57,600円が1ヶ月あたりの自己負担限度額になります。(2019年4月1日現在)
高額療養費制度により人工膝関節置換術の費用負担を抑えることはできますが、具体的な入院期間や治療費は、医療機関ごとに変わります。人工膝関節置換術を考えるには、医療機関と相談が必要です。高額療養費制度について詳しく知りたい方は、現在加入されている健康保険組合やお住まいの市区町村役場等へお尋ねください。通院されている病院の窓口でも確認できます。

〈高額療養費制度についての参考ウェブサイト〉

監修:新潟医療福祉大学 教授 大森 豪先生

2020年12月作成