おしえてロコモティブシンドローム
2.ロコモを予防するには
ロコトレ
ロコトレとは
ロコモーショントレーニング[ロコトレ]は、ロコモティブシンドローム[略称:ロコモ]を予防し、改善するための日本整形外科学会が提唱している運動です。高齢者でも実践できる簡単な運動内容であり、道具や広いスペースがなくても短時間で気軽に家の中で行えるため、日常的に続けやすいことが特徴です。
ロコトレでは「片脚立ち」と「スクワット」を行います。主にバランス能力や筋力を鍛えますが、結果として筋肉だけでなく、骨や関節、神経など加齢とともに弱くなっていく運動器を鍛えることを目的としています。また、ロコトレは運動機能の向上に加え、変形性関節症の症状改善にも効果が期待できます。
なお、足腰の筋力を強く保ちロコモを予防するためには、ロコトレ以外にもウォーキング、ジョギング、水泳、自転車、ジムトレーニングなど、楽しみながら続けられる運動を習慣づけることも大切です。
ウォーキング、ジョギング、水泳、自転車、ジムトレーニングなど、いろいろな運動を習慣づけましょう。
ロコトレ[片脚立ち]
「片脚立ち」は、バランス能力や筋力を鍛えるためのトレーニングです。
片脚立ちをすると、足には通常の2倍の重力がかかり筋肉が収縮します。そのため、立っている側の太ももの付け根の骨が強くなりバランス能力も高まるので、転倒を予防し骨折リスクを少なくする効果が期待できます。
また、片脚立ちを続けていくと、歩く動作が安定して速く歩けるようになったり、階段の昇り降りもスムーズにできるようになります。
〈方法〉
① 姿勢をまっすぐにして立ち、床に足がつかない程度に軽く片足を上げます。
② 不安のある方は、机に指先をついて行います。
③ そのまま1分間保持します。
④ 脚を替えて、同様に行います。
⑤ 左右1セット、1日3回を目標に行います。
注意すること
転倒しないように、机や手すりなど必ずつかまるところがある場所で行います。
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ロコトレ[片脚立ち]
(支えが必要な方)
〈方法〉
① 机などに両手や片手をついて、姿勢をまっすぐにして立ち、軽く片足を上げます。
② 指をついただけでもできる方は、机に指先だけついて行ってみましょう。
③ そのまま1分間保持します。
④ 脚を替えて、同様に行います。
⑤ 左右1セット、1日3回を目標に行います。
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ロコトレ[スクワット]
「スクワット」は、下半身全体の筋力を鍛えるためのトレーニングです。
スクワットを続けることで下半身の筋力がアップすると、「立つ」「座る」といった日常生活動作が安定します。また、ゆっくり行うことで柔軟性を高めるストレッチ効果も期待できます。
- 〈方法〉
- ① 肩幅より少し広めに脚を広げて立ちます。
- ② 前傾姿勢になって、お尻を後ろに引きながら、膝をゆっくりと曲げていきます。
- ③ ゆっくりと元の姿勢に戻します。
- ④ 深呼吸するくらいのペースで、5~10回繰返し、1日2~3セットを目標に行います。
注意すること
- ● 息を止めないで行いましょう。
- ● 負担がかかり過ぎるため、膝は90度以上曲げないようにしましょう。
- ● 太ももの筋肉にしっかりと力が入っていることを意識しましょう。
- ● 支えが必要な方は、机に手をついて行いましょう。
スクワットを行う際には、
正しいフォームを心がけることが大切
正しいフォームでスクワットを行うことによって、太もも前面の筋肉や太もも裏側の筋肉のほか、お尻の筋肉が鍛えられます。
正しいフォームで行わないと十分な効果が得られないばかりか、逆に膝を痛める原因にもなります。例えば、膝がつま先よりも前に出てしまうフォームでは膝に余計な負荷がかかってしまい、膝に痛みが出やすくなります。
また、スクワットの姿勢をとる際に、筋力の弱い女性は膝が内側に向いてしまいやすく、逆にO脚の方は膝が外側に広がってしまうことが多いため、注意が必要です。
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ロコトレ[椅子スクワット]
(支えが必要な方)
スクワットのコツがつかめない場合や、支えがあっても上手に立てない場合は、イスと腰の位置より高い机を使って行ってみるとよいでしょう。
- 〈方法〉
- ① 背筋を伸ばして椅子に深く腰をかけます。
- ② 肩幅よりも少し広めに脚を開きます。
- ③ 両手を机について、ゆっくり立って、ゆっくり座ります。これを繰り返します。
- ④ 立位で行うスクワットと同じ部位の筋肉を使いますので、同等の効果があります。
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ロコトレプラス
自身の体力に応じて可能であれば、ロコトレプラスとして、ふくらはぎの筋力をつけるヒールレイズ[かかと上げ]や下肢[太ももの付け根から足のつま先まで]の柔軟性、バランス能力、筋力を高めるフロントランジをさらに行うとよいでしょう。
- 〈方法〉
- ① 不安のある方は、机や椅子の背もたれなどに手をついて行いましょう。
- ② 転倒しないように、机や手すりなど必ずつかまるところがある場所で行います。
- ③ 姿勢をまっすぐにして立ち、ゆっくりとかかとを上げ、ゆっくり下ろします。
- ④ 1セット10~20回できる範囲を目安に、1日2~3セット行います。
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- 〈方法〉
- ① 腰に両手をついて姿勢をまっすぐにして立ちます。
- ② 片方の脚をゆっくり大きく前に踏み出します。
- ③ 太ももが水平になるくらいに腰を深く下げます。
- ④ 身体を上げて踏み出した脚を元に戻します。脚を変えて同様に行います。バランスを崩して転ばないように気をつけます。
- ⑤ 1セット5~10回、できる範囲を目安に、1日2~3セット行います。
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監修:医療法人社団愛友会 伊奈病院 整形外科部長 石橋 英明先生
2020年12月作成